第10回:【自動盤の基本構造と種類】主軸「移動」型自動盤を詳しく知ろう

はじめに

 みなさん、こんにちは! 前回は自動盤の「主軸移動型」と「主軸固定型」の違いを紹介しました。今回は主軸移動型自動盤の仕組みと特徴についてより詳しく解説します。

主軸移動型自動盤とは?

 主軸移動型自動盤(スイス型自動盤とも呼ばれる)は、回転する材料を前後に移動させながら加工を行う方式の自動盤です。

 一般的な主軸固定型旋盤では主軸が前後には移動せずに固定されており、刃物(バイト)を動かして加工を行いますが、主軸移動型自動盤では逆に材料自体を主軸で掴んで前後に動かしながら加工します。材料はガイドブッシュで支えられるため、長尺の部品を高精度に加工できるという特長があります。

 ※この方式が「スイス型」と呼ばれるのは、もともとスイスの時計産業で精密な小径部品を加工するために開発されたためです。高精度な時計部品の製造に適したこの方式は、現在では自動車、医療機器、電子部品など、さまざまな分野で活用されています。

ガイドブッシュとは

 主軸移動型自動盤の最大の特徴の一つは「ガイドブッシュ」を使用することです。ガイドブッシュとは材料を刃物(バイト)のすぐ近くで支持する部品のことで、加工時の材料の「たわみ」や「振れ」を抑える重要な役割を果たします。ガイドブッシュの穴は材料の外径にぴったり合うように調整する事ができ、回転する材料を支えます。

 この仕組みのメリットは長尺部品の加工時に顕著に現れます。
 例えば通常の旋盤(主軸固定型)では材料が長くなるほど加工時にたわみや振れが発生し、寸法精度が低下します。しかし、主軸移動型自動盤ではガイドブッシュが材料を支えるため、たわみや振れを抑えながら安定した寸法精度を保つことができます。そのため細長いシャフトやピン、医療機器の部品など、高精度が求められる長尺の部品加工に適しているのです。

 ただし、ガイドブッシュの使用には注意点もあります。 材料の外径にばらつきがある場合や、材料が完全な円形でない場合(楕円形など)にはガイドブッシュの固定が不安定になり、精度に影響を及ぼすことがあります。そのため、主軸移動型自動盤で高精度な加工を行うには材料自体の精度管理が重要になります。

主軸移動型の特徴

長尺の部品を高精度で加工できる(たわみや振れが抑えられる)
材料自体が持つばらつきによっては加工精度に影響が出ることがある

次回予告

次回は主軸固定型自動盤の詳しい仕組みについて解説します!お楽しみに!

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